1950年 フラッドとドレッシャー
2人とも黙れば軽く済む。でも売ったほうが得なので、両方が売って両方が損をする。
2人が別々の部屋で取り調べを受ける。黙るか、相手を売るか。
2人とも黙れば、証拠が足りず軽い罰で済む。自分だけ売れば、自分は無罪。 2人とも売れば、2人とも重い罰。
相手が黙るなら、自分は売ったほうが得。相手が売るなら、自分も売らないと損。どちらの場合でも「売る」が得になる。だから2人とも売って、2人そろって、黙っていた場合より悪い結果になる。
ここが不気味なところで、全員が正しく計算した結果、全員が損をする。
1回きりなら売るのが正しい。しかし人生は1回きりではない。
1980年ごろ、この対戦をプログラム同士で何百回も繰り返す大会が開かれた。優勝したのは、いちばん短くて単純な戦略だった。名前は「しっぺ返し(Tit for Tat)」。
最初は必ず協力する。あとは相手が前回やったことをそのまま返す。 売られたら次は売る。戻ってきたらこちらも戻す。
性格は4つ。先に裏切らない。やられたら必ず返す。すぐ許す。分かりやすい。 相手を出し抜こうとしないのに、総合点では誰よりも稼いだ。
次があると分かっていると、人は協力しはじめる。 逆に言えば、次が無い場面では裏切りが増える。
観光地の一見客向けの店、辞める直前の職場、二度と会わない相手との取引。「次が無い」と分かっている場所ほど、雑な扱いが起きやすい。
信用を作りたいなら、「またやりますよね」を先に共有するのがいちばん効く。 相手の善意に期待するより確実だ。
グループ課題
全員がきっちりやれば全員が楽なのに、抜けた人が得をする形なので崩れる。
崩れにくくする方法は決まっていて、誰が何をやったかが見えるようにすること。見えると「次」が生まれる。
値下げ合戦
2軒とも値段を保てば2軒とも儲かる。 片方が下げれば客を取れる。だから両方下げて、両方が儲からなくなる。
国どうしの軍拡も同じ形。囚人のジレンマは「悪人がいるから起きる」わけではない。
行列の割り込み
全員が並べば全員が早く進む。割り込めば自分だけ得をする。 それでも大半の人が並ぶのは、見られていることと、次も同じ場所に来ることが効いているから。
持ち帰るとしたら
しっぺ返しの4つを、そのまま人付き合いに使える。 先に裏切らない、やられたら返す、戻ってきたら許す、分かりやすくする。強い戦略はたいてい地味だ。
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