1985年 アークスとブルーマー

サンクコスト(もったいない)

もう戻らない金と時間が、次の判断を歪める。つまらない映画を最後まで見るあれです。

何の話か

有名な実験がある。スキー旅行のチケットを2枚買った人に、日程が重なっていたと伝える。片方は1万円、もう片方は5千円。楽しいのは5千円のほうだと分かっている。

それでも、多くの人が1万円のほうへ行く。 高かったからだ。

ここが変なところ。どちらへ行っても、払った1万5千円は戻ってこない。 決めるときに使っていい情報は「どちらが楽しいか」だけのはずなのに、すでに払った額のほうが勝ってしまう。

なぜ切れないのか

3つ効いている。損を確定させたくない(やめた瞬間に「無駄だった」が確定する。続けているあいだは、まだ負けていない気がする)。一貫していたい(自分で決めたことを覆すのは、間違いを認めることになる)。人に見られている(途中でやめる人だと思われたくない)。

どれも合理的ではないが、どれも人として自然だ。 だからこの罠は、賢さでは避けられない。手続きで避けるしかない。

外し方

「いま初めてこの話が来たら、始めるか」と聞き直す。始めないなら、続ける理由も無い。

もう1つは先に降りる条件を決めておくこと。「30分見て面白くなければ出る」「3ヶ月で成果が出なければやめる」。始める前に決めておけば、やめるのが失敗ではなく計画になる。

投資でいう損切りラインと同じ考え方で、苦しくなってから決めようとすると、まず決められない。

身のまわりの例

  • 食べ放題の最後の1皿

    もう入らないのに、元を取ろうとして食べる。 払った額はもう戻らないので、気持ち悪くなるぶんだけ純粋に損をしている。

    この例のいいところは、損が体で分かるところ。

  • 課金したゲーム

    楽しくないのに続けるのは、やめた瞬間に課金が無駄になる気がするから。実際には、続けても課金は戻らない。戻らないものを守るために、時間だけが増えていく。

  • 合わない仕事や関係

    「ここまで続けたのに」がいちばん強く効く場面。年数は、これからの見込みについて何も教えてくれない。

    ただし、サンクコストだと言い切るのが乱暴な場合もある。 積み上げたものが本当に価値を生み続けているなら、それは沈んでいない。見分ける問いは「これから何を生むか」だけ。

持ち帰るとしたら

「もったいない」と感じた瞬間が、判断が歪みはじめた合図。 その言葉が出たら、いったん止まって「これから」だけで数え直す。

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