なんで自分に都合のいい話ばかり集めちゃうの?

その正体は、

確証バイアス

かくしょう ばいあす/Confirmation bias

自分の考えに合う証拠は探しに行くのに、合わない証拠は探さない。

調べれば調べるほど、「やっぱりそうだ」と自信が増えていく。でも、それは本当に調べたからでしょうか。1960年、ロンドンの大学で、3つの数を使った小さな実験がこのクセをあぶり出しました。

確かめた人
ピーター・ウェイソン(1960年、ロンドンの大学の学生29人で)
実験の中身
「2, 4, 6」にかくれた決まりを、自分で例を出して当てる
よく出る場所
検索・人の第一印象・診断の結果
見分け方
「間違っているとしたら、何が見えるはずか」を一度も探していない

01「2, 4, 6」の決まりを当てる

ウェイソンは学生に「2, 4, 6」と書いたカードを見せて、こう言いました。「この3つの数は、ある決まりに合っています。決まりを当ててください」。学生は好きな3つの数を書いて、「合っていますか」と何度でも聞けます。自信がついたら、決まりを答える。間違いなら「ちがいます」と言われて、続きをやります。

ウェイソンの実験
  1. 1「2, 4, 6」を見せて、「かくれた決まりを当ててね」

  2. 2学生は「8, 10, 12」「14, 16, 18」「20, 22, 24」と試す。全部「合っています」

  3. 3自信をもって「2ずつ増える!」。でも、ちがう。29人のうち、最初の答えで正解したのは6人

  4. 4決まりは「増えていればなんでもいい」。「2ずつ」なら合わないはずの「1, 50, 99」を1回試していれば、気づけた

いちばん多かった間違いが、この「2ずつ増える」でした。合う例を3つ出して、3回「合っています」と言われると、もう当たった気になります。でも、「合っています」が何回続いても、ほかの決まりは消えません。消せるのは、自分の決まりなら合わないはずの例を出して、それでも「合っています」と返ってきたときだけ。最初に正解した6人は、答える前に平均8回試していて、そういう例をちゃんと混ぜていました。

02なぜ合う例ばかり試すのか

答えを知ってから読むと、「なんで試さなかったの?」と思います。でも、理由はだいたい決まっています。

  1. 「合っています」は気持ちいい

    「合っていない」と言われるのは、小さく負けること。だから人は、勝てる質問だけを投げます。3回勝てば、もう答えたくなります。

  2. 一度決めると、見え方が変わる

    「2ずつ増える」と思った瞬間から、目に入る数がその形に並び直されます。合う例は「やっぱり」に見え、合わない例は「変わった例」に見える。同じものを見ても、確信だけが増えていきます。

  3. 間違いと言われても、手放せない

    ウェイソンの実験では、「ちがいます」と言われたあとも、半分以上の人が同じ決まりのまま次の例を出しました。同じ決まりを、言葉だけ変えて言い直した人も3人いました。

ウェイソンは、これを「頭の良さ」の話にはしませんでした。参加者は大学生で、みんな真剣に取り組んでいた。足りなかったのは能力ではなく、自分の考えを壊しに行こうとする気持ちだった、というのがこの論文の結びです。

03身のまわりの確証バイアス

実験の外には、「合っています」と言ってくれる先生はいません。かわりに、自分で合う例だけを集めに行きます。

検索の1ページ目「コーヒー 体に悪い」で検索すれば、悪いという記事が並びます。「コーヒー 体に良い」で検索すれば、良いという記事が並ぶ。検索の言葉に答えが入っているので、何を打っても確信が増えます。調べたつもりで、確認しているだけ。
合わないと思った相手一度「この人は合わない」と思うと、ふつうの「おつかれ」がそっけなく聞こえ、ふつうの沈黙が無視に見えます。好きな人の同じひとことは「やさしいな」で済む。行動は同じで、見ているレンズがちがうだけです。
診断の結果結果を読むと、当たっている行が目に入り、外れている行は飛ばします。それで「当たってる!」になる。試しに、外れていると思う行を3つ探してみてください。見つかるなら、それがふつうで、それでいいのです。

04振り回されないためのコツ

  1. 「間違っているとしたら、何が見えるはずか」と聞く

    自分の考えが外れているなら、どんな例が出てくるはずか。それを1つ決めて、探しに行きます。見つからなければ、そのときはじめて「調べた」と言えます。

  2. 反対の言葉でも検索する

    「◯◯ 体に悪い」で調べたら、「◯◯ 体に良い」でも調べる。両方の1ページ目を見比べて、はじめて全体が見えます。片方だけなら、確認しただけです。

  3. 反対しそうな人に、先に見せる

    賛成してくれそうな人に見せると、気持ちよく「合っています」が返ってきます。実験の先生の役は、反対しそうな人にやってもらうのがいちばん安上がりです。

とはいえ、自分の考えに合う例が集まるのは、うれしいものです。そこは楽しんでいい。「調べた」と「確認した」は別の作業、とだけ覚えておけば十分です。合わない例を1つ探しに行った時点で、はじめて調べたことになります。

05もっと知りたくなったら

なかまの効果

次に気になりそうなこと

頭がいい人なら引っかからない?
ウェイソンの実験の参加者は、みんな大学生でした。それでも最初の答えで正解したのは29人中6人。論文は、必要なのは能力ではなく「自分の考えを試してみようとする気持ち」だと書いています。賢さで防ぐものではなく、手順で防ぐものです。
「ちがいます」と言われたら、考えを変えられる?
それが意外と変えられません。実験では、間違いだと言われたあとも、半分以上の人が同じ決まりのまま次の例を出しました。同じ決まりを言葉だけ言いかえて、もう一度答えた人もいます。そのあと正解にたどり着いた人は、合わない例を自分で出すようになっていました。
正解した6人は、何がちがった?
答える前に、平均で8回例を試していました(最初に間違えた人は平均3.7回)。しかも「6, 4, 2」のように、決まりに合わないはずの例をわざと混ぜていた。たくさん試したから当たったのではなく、壊そうとしたから当たったのです。
科学者はどうやって防いでいる?
ウェイソンはこの論文の最後で、科学の方法は「仮説を反証しようとする態度」にある、と書いています(哲学者カール・ポパーの考え)。実験とは、自分の仮説が外れるかもしれない場面をわざと作ること。「間違っているとしたら何が見えるか」は、その小さい版です。

同じ棚の本

こころの棚で、この本の前と次に並んでいる2冊。

← こころの棚に戻る