認知バイアス・心理効果1943年 エイブラハム・ウォルド
帰ってきた飛行機の弾痕を見て「ここを厚くしよう」は間違い。帰ってこなかった機体の話を、誰も聞けない。
第二次大戦中、軍は帰還した爆撃機の弾痕の分布を調べた。翼と胴体に穴が多く、エンジンと操縦席には少ない。軍は「穴の多いところを厚くしよう」と考えた。
統計学者のウォルドは逆を言った。厚くすべきはエンジンだ。
理由。見ているのは帰ってきた機体だけ。翼に穴が開いても帰れた、ということは翼は撃たれても大丈夫だということ。エンジンに穴が無いのは、エンジンを撃たれた機体が帰ってこなかったから。 データに無い場所こそが、致命的な場所だった。
消えたものは、消えたという事実ごと消える。 成功した会社の話は本になるが、同じことをやって潰れた会社の話は本にならない。だから「成功者の共通点」を集めると、失敗者にも共通していたことが混ざる。
「大学を辞めて起業した億万長者」は有名だが、大学を辞めて起業して消えた人は、数が何百倍も多いのに一人も名前を知らない。
目の前のサンプルが「生き残った側だけ」でできているとき、そこから引いた教訓は、生き残る方法ではなく、生き残った人の特徴にしかならない。
「これをやって、うまくいかなかった人はどこにいるか」と聞く。見当たらないなら、それは「いない」のではなく「見えていない」。
分母を探す。成功例が10あるなら、同じことを試した人が何人いたかを知らないと、10という数字は何も言っていない。
自分の話にも使える。「昔はこれで乗り切れた」は、乗り切れなかった回を忘れているだけのことがある。
「昔の家電は丈夫だった」
いま動いている40年前の冷蔵庫を見て言う。壊れた40年前の冷蔵庫は、とうの昔に捨てられていて目に入らない。 残っているのは、丈夫だった個体だけ。
成功者のインタビュー
「毎朝4時に起きた」「直感を信じた」。同じことをして失敗した人の数は、記事にならない。 共通点を集める前に、その習慣を持っていて消えた人がいないかを考える。
このサイトの広告ページ
`/ads` に月ごとの数字を載せる方針にしているのは、良い月だけ載せると、これになるから。少ない月も載せないと、見た人が「いつもこれくらい」と読み違える。
持ち帰るとしたら
目の前の成功例は、いつも「帰ってきた飛行機」。 弾痕の無い場所に何があったかを、一度は考える。
関係のある話