なんで見た目がいい人の企画は通りやすいの?
その正体は、
ハロー効果
はろー こうか/Halo effect
1つ目立つ良いところがあると、関係の無いところまで良く見える。
同じ企画書なのに、出す人によって通りやすさが変わる。1977年、アメリカの大学で、同じ先生が「感じよく」話す映像と「冷たく」話す映像を別々の学生に見せる実験が、この仕組みを確かめました。顔もなまりも同じなのに、点が変わったのです。
- 確かめた人
- エドワード・ソーンダイク(1920年、軍で使われていた評価表の数字を調べて)
- 実験の中身
- 同じ先生の「感じのいい」映像と「冷たい」映像を別々の学生に見せ、見た目・しぐさ・なまりを採点してもらう(1977年、ニスベットとウィルソン)
- 名前の由来
- ソーンダイクの言葉。人全体の印象が、後光(halo)のように1つ1つの項目の点を染めてしまう、という意味
- よく出る場所
- 履歴書の有名な社名・星4.8のレビュー・第一印象のいい人の遅刻
- 見分け方
- 項目ごとに点を付けたはずなのに、全部そろって同じ点になっている
01同じ先生が、感じよく話す映像と、冷たく話す映像
ニスベットとウィルソンは、ミシガン大学の学生118人に「先生の評価の研究です」と言って、ある先生のインタビューの映像を見せました。先生はベルギー出身で、英語にはっきりしたなまりがあります。映像は2種類。半分の学生には、討論を歓迎し、学生を信頼して話す感じのいい先生を。もう半分には、「学生には学生の時間が、教授には教授の時間がある」と討論をさせず、「どうせ読んでこない」と毎週テストをする冷たい先生を。同じ人が、7分ずつ演じ分けています。
1「先生の評価の研究です」と言って、学生118人に、ある先生のインタビューの映像(7分)を見せる
2映像は2種類。半分の学生は、討論を歓迎する感じのいい先生を、もう半分は、討論をさせず毎週テストをする冷たい先生を見る。同じ人が演じ分けている
3見終わったら、先生の見た目・しぐさ・なまりを「感じが悪い〜感じがいい」の8段階で採点する。この3つは、どちらの映像でも同じ
4感じのいい先生を見た学生の多くは、見た目を「いい」と採点。冷たい先生を見た学生の多くは、同じ見た目を「悪い」と採点した
顔もしぐさもなまりも、2本の映像で変わっていません。音を消して見せた別の34人は、どちらの映像にもほとんど同じ点を付けています。それでも、話し方で嫌いになった学生には、同じ顔が「感じが悪い」に見え、同じなまりが耳ざわりに聞こえた。なまりは、冷たい先生を見た学生の大多数が「悪い」と答えています。1つの印象が、関係の無い項目の点まで動かした。これがハロー効果です。
名前を付けたのはソーンダイクで、1920年のことです。彼は実験をしたのではなく、軍で実際に使われていた評価表の数字を調べました。体格・知性・リーダーシップ・人格を別々に採点する表で、「その項目だけを見て、ほかは完全に無視すること」と念を押す指示まで付いていた。それでも、ある飛行隊長が訓練生137人を採点した表では、知性の点が体格の点と強く連動していて、その強さは知性と人格の連動と大きく変わりませんでした。本来なら、知性と人格のほうが3倍ほど強く結びつくはずで、どれも「似すぎている」と彼は書いています。人全体の印象が、後光(halo)のように1つ1つの項目を染めている。ソーンダイクはそう名付けました。
02なぜ、1つの印象が全部に広がるのか
項目ごとに別々の点を付けるのは、簡単そうに見えて、人にはほとんどできません。理由は、2つの研究の中に出そろっています。
人は「どういう人か」を1つにまとめたがる
ソーンダイクの結論は、有能な監督者や先生でも、人を「別々の性質の寄せ集め」として見て、1つ1つに別々の大きさを付けることはできない、というものでした。採点する側は「だいたい良い人」「だいたい劣る人」という1つの感じを先に持ち、その感じで各項目の点を染めてしまう。100年前に書かれたことですが、1977年の実験でも同じことが起きています。
材料がそろっていても、印象が先に答えを出す
映像の実験では、見た目・しぐさ・なまりは「この人を好きか」とは別に採点できるだけの材料が、目の前にありました。それでも点は印象に引っぱられた。同じなまりが、感じのいい先生なら半分の学生に「いい」と聞こえ、冷たい先生なら大多数に耳ざわりに聞こえる。見えているものを、印象に合わせて読んでいるのです。
本人は、順番が逆だと思っている
実験のあと、学生に「先生への好き嫌いが、見た目などの点に影響しましたか」と聞くと、多くは「影響していない」。冷たい先生を見た学生に逆向きに聞くと、「見た目やなまりが気に入らなかったから、先生を嫌いになった」と答えました。順番が、実際と正反対です。好き嫌いが先で、点があと。でも本人には、点が先で好き嫌いがあとに見えている。だから自分では気づけません。
見た目の後光も、同じ形で効きます。1974年の実験では、男子学生に作文を採点させるとき、書いた人として魅力的な女性の写真を付けると、そうでない写真のときよりずっと高い点が付きました。作文そのものは同じで、出来の悪い作文ほど差が大きかった。ニスベットとウィルソンは、自分たちの実験に先立つ研究として、この実験を挙げています。企画書を読む前に、出した人の顔が目に入っているなら、同じことが起きていてもおかしくありません。
03身のまわりのハロー効果
実験の外では、「感じのいい先生」の役を、肩書きや星の数や第一印象がやっています。
場面ごとに見ると、こんなところに出てきます。
仕事では
企画が通るかどうかは、中身の前に、出した人の印象で半分決まっていることがあります。読む側なら、中身の項目(何を・いつまでに・いくらで)を先に書き出してから、名前を見る。出す側なら、相手が項目ごとに点を付けやすい形にして渡す。後光が無いときでも、中身で読んでもらえます。
恋愛では
第一印象のいい人の遅刻は許せて、そうでない人の遅刻は許せない。同じ遅刻です。「別の人がやったらどう思うか」と、一度置き換えて考えてみると、自分が見ているのが行動なのか印象なのかが分かります。許すのは、それからでも遅くありません。
お金・買い物では
星4.8を見てから説明文を読むと、全部が良く読めます。順番を変えて、星を隠して説明文を先に読む。それから星を見る。説明文の印象が変わらなければ中身で選んでいるし、変わったなら星で選んでいた、と分かります。
04振り回されないためのコツ
項目を分けて、別々に点を付ける
面接なら「話し方」と「実績」を同じ5分で採点しない。レビューなら、星と文章を別々に見る。ソーンダイクの結論そのままで、ほかの項目の材料を知らないまま点を付けるのがいちばん効きます。
印象の元を、一度隠してみる
名前・写真・肩書き・星を隠して、中身だけを読む。隠したとたんに評価が変わるなら、それまで見ていたのは中身ではありませんでした。オーケストラの採用でカーテンを使うと女性が通りやすくなった、という有名な研究もありますが、こちらは効き目の大きさが揺れています(最後の「次に気になりそうなこと」に書きました)。それでも、見なくていいものを見ない仕組みは、安く作れて損がありません。
「全部いい」「全部だめ」と思ったら、疑う
項目ごとに点を付けたはずなのに全部同じ点なら、ソーンダイクの評価表と同じことが起きています。良い印象の人には悪いところを1つ、悪い印象の人には良いところを1つ、わざと探してみる。1つ見つかれば、後光は少し薄くなります。
とはいえ、1つの印象で人を見るのは、頭の節約でもあります。ソーンダイクでさえ、有能な人でも項目を分けて見ることはできない、と書きました。だから後光を無くそうとするより、後光が出ている場所を知っておくほうが現実的です。企画書を読む前に顔を見た、星を見てから文章を読んだ。それに気づけたら、もう半分は直っています。
05もっと知りたくなったら
なかまの効果
次に気になりそうなこと
どうして「ハロー(後光)」という名前?
悪い印象のほうにも効く?
カーテン越しの審査(オーケストラ)は、本当に効いた?
自分がハロー効果にかかっていると、気づける?
同じ棚の本
こころの棚で、この本の前と次に並んでいる2冊。