認知バイアス・心理効果1955年 ヘンリー・ビーチャー

プラセボ効果

効くと思って飲むと、中身が砂糖でも効く。高い薬のほうがよく効き、注射は錠剤より効く。

何の話か

戦場の軍医だったビーチャーは、モルヒネが切れたとき、生理食塩水を「強い鎮痛剤だ」と言って注射した。 相当な割合の兵士で痛みが和らいだ、と彼は書いている。

帰国後、彼は過去の臨床試験を集めて「薬の効果の約3分の1は、薬そのものではなく『効くという期待』から来ている」と主張した。この数字は後に盛りすぎだと分かったが、期待が体に効くこと自体は、その後の研究で何度も確かめられた。

だから新薬の試験では、必ず「偽薬を飲む組」を作って比べる。偽薬より効かない薬は、薬ではない。

どこまで効くか

よく効くのは、痛み・吐き気・疲れ・不安のように、本人の感じ方が症状そのものであるもの。脳が「楽になるはずだ」と判断すると、実際に痛みを抑える物質が出る。

逆に、腫瘍が小さくなる、骨がくっつく、感染が消えるといった、体の物理的な変化にはほとんど効かない。「気の持ちよう」で治る病気と、治らない病気がある。

面白いのは、偽薬だと知らされていても、少し効くという報告があること。「これは偽薬です。でも偽薬は効くことが分かっています」と渡すと、それでも症状が改善した。儀式そのものが効いている。

使い方と、だまされない方法

自分に対しては、儀式を作る。寝る前の決まった手順、集中する前の一杯。「これをやると切り替わる」と体に覚えさせれば、その手順自体が効きはじめる。中身が何であるかは、あまり関係ない。

売る側に対しては、「偽薬と比べた試験があるか」と1回だけ聞く。「使った人の9割が実感」は、偽薬でも出る数字。比べていない効果は、効果ではなく期待の測定値。

高いサプリ、ブランドの水、「医師監修」の枕。効いている実感は本物でも、その値段を払う理由にはならないことが多い。

身のまわりの例

  • 高い薬は、よく効く

    同じ偽薬を「1錠250円」と「1錠10円」で渡すと、高いほうが痛みをよく抑えた。 ブランド品のほうが効く気がするのは、思い込みではあるが、体は本当に反応している。

  • エナジードリンクの「効いてきた」

    飲んで5分で「効いてきた」と感じる。カフェインが血中に回るには20〜45分かかる。最初の5分で効いているのは、缶の色と炭酸と「効くはず」。

  • 「これを着ると勝てる」

    験担ぎは、迷信としては意味が無いが、プラセボとしては効いている。 落ち着いて動ける、いつもの手順で入れる。効いている理由を誤解しているだけで、効いていること自体は本当。

持ち帰るとしたら

効いた実感は本物。でも、それは「その商品が効いた」証拠にはならない。 自分に効かせるのは自由。他人に売られるときだけ、比較を求める。

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